絶望から希望へ [マーラー]

若い頃はとにかく勢いの良い曲が好きでした。例えば、前にも紹介したショスターコビッチの交響曲第5番、ストラビンスキーの「春の祭典」「火の鳥」、チャイコフスキー交響曲第4番、第5番、そしてマーラーの交響曲の数々。しかし人生経験を重ねると他の曲調が好きになってきます。例えば今日の記事にするのは、深い悲しみからそれを乗り越えて希望が見える曲です。まあ、他の楽章は結構勢いがあったりしますが・・・


[A] マーラー 交響曲第3番 第6楽章
ロンドンシンフォニーオーケストラのYou Tubeページより



ロンドン響、こんなページを持っているとはやりますね。全部は聞かなくてもいいのですが、最初と最後だけ聞いてみてください。最初の絶望からだんだん盛り上がって行き、最後は希望が見えたでしょうか。



[B] マーラー 交響曲第5番 第4楽章
kaburagi10さんによるDTMでどうぞ。



すばらしいDTMの演奏です。実際の演奏で著作権の問題のない動画は見つけることができませんでした。この曲も絶望の曲ですが、最後は盛り上がり希望が見えます。マーラーは絶望だけでなく最後は希望を見せてもらえるところが好きです。


[C] チャイコフスキー 交響曲第6番「悲愴」 第4楽章
PINAより武久源造氏によるピアノの演奏



この曲は3楽章と4楽章を入れ替えれば、最後は盛り上げて終わりとなり、通常の交響曲になります。しかしチャイコフスキーは最終楽章を悲愴なものにしたのです。この曲は著作権の問題のないオケの演奏は見つからず、この前からグレーとしていたPTNAの音源です。いろいろな人のコメントをいただき、PTNAは埋め込んでも良いと考えました。PTNAですからピアノであり、オケではありません。You Tubeには問題ありそうな動画たくさんありましたので、そちらが良ければ探して見てください。

この曲、悲しみからだんだん中盤で希望が見えて来ます。しかしながら最後はやはり悲愴な終わり方をします。そこがちょっとマーラーとは違いますね。

ここで突然

[のだめクイズ]

のだめファンのためだけののだめクイズです。映画版最終楽章前編の最後の最後はお決まりのラプソディインブルーでしたが、その前、シュトレーゼマンは耳が聞こえなくなりつつあり、のだめはコンクールに出られず、千秋先輩との仲も怪しくなり、すべてが悲劇的になるラスト。そのシーンのBGMは上記3つの交響曲[A][B][C]のどれでしょう。
答えは

[B]

です。ちょっと引っかけ問題です。千秋は最後「悲愴」を指揮しますから、その悲しみの印象から[C]と間違いそうですね。曲調も似ており間違えやすいかなと思い出題しました。私はのだめマニアではないのですべてを把握していませんが、のだめにはマーラーがほとんど出てこないという印象でした。アニメ版でビエラ先生がマーラー交響曲第2番「復活」を演奏していた程度しか記憶にありません。それが映画版の前編では最後に大変効果的にしかもかなりの長さでマーラーが使われました。マーラーファンとしてはうれしい限りです。エンディングで劇中演奏曲は紹介されていますが、BGMの紹介はないようです。


2010-08-05 00:00  nice!(13)  コメント(29)  トラックバック(0) 
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matcha

僕は、マーラーの曲は、年をとってから聞こうと思っていたんです。ブルックナーは、聞いても・・・。
マーラーを理解するには、まだ早い、若いと思っていたんです。非常に感覚的です。
なぜかな。って立ち止まって、考えたこともないんですよ。
僕は、マーラーという人を一つの事件で、大きな衝撃を受けています。この人は、一体何を考えているんだろうと思った事件ですが・・・。
しかし、マーラーはマーラーなりの音楽に対する考えがあってのこと・・と、その事が自分なりに解決するまで聞くまい・・っと思った次第・・。
今回yablinsky さんのご好意により、マーラーのシリーズを記事にして頂いているので、僕が抱いたマーラーとは、別のマーラーを仮想で作って聴いています。
その後、考察し、僕自身のマーラー像を改めようと思っています。
by matcha (2010-08-05 14:54) 

若鷹タカ子

こんにちは~♪
ミッキーさんがこの著作権の記事、ほめておられましたよ。

絶望から希望…意味深ですね。

>僕自身のマーラー像を改めようと

今お持ちの印象を変えられる必要があるのでしょうか?
matcha さんの感性はご自身のものです。

↑マンチ軍団さんって、猫お好きな方でしょうか?横レスすみません。
ではまた
若鷹タカ子

by 若鷹タカ子 (2010-08-05 17:49) 

Enrique

人生なかなか一筋縄ではいかないと感じ始めたころ,聴く曲が変わってくるのでしょうか?チャイコフスキーの悲愴は割とシンプルな悲しみですが,マーラーは大オーケストラではないと表現できない悲しみ・そこからの再出発。人生ドラマですね。
すいません,「のだめ」あまり知りません。
by Enrique (2010-08-05 18:29) 

yablinsky

matchaさん、コメントありがとうございます。1つの事件って何でしょう。気になります。候補は
1、「亡き子をしのぶ歌」事件
2、「第9のジンクス」
3、「改宗事件」
ですが、1でしょうか。3は記事を書きましたが、そのうち1,2についても書きますね。

by yablinsky (2010-08-05 22:06) 

yablinsky

若鷹タカ子さん。コメントありがとうございます。マンチ軍団さんのブログの写真もすごく質の高いねこ写真です。
by yablinsky (2010-08-05 22:09) 

yablinsky

Enriqueさん、コメントありがとうございます。若いときは絶望を表す曲は暗くて地味なので好きではありませんでしたが、人間長くやっていると、絶望的な状況も何度か経験し、好む曲も変わるようですね。でも最後に希望が見えるマーラーが好きです。
by yablinsky (2010-08-05 22:13) 

yablinsky

マンチ軍団さん、niceありがとうございます。
by yablinsky (2010-08-05 22:13) 

若鷹タカ子

こんばんは、壱岐に仕事でいます。

マンチ軍団さんを後で拝見します
by 若鷹タカ子 (2010-08-06 19:06) 

Cecilia

「仮面の中のアリア」という映画の中でもマーラーの曲が効果的に使われていたことを思い出しました。

あらすじはこちらで・・・
http://movie.goo.ne.jp/movies/PMVWKPD12066/

CDはこちらです。
http://ml.naxos.jp/album/AN28801

交響曲4番と「大地の歌~青春について」、歌曲「私はこの世に捨てられて」が使われていますね。

「私はこの世に捨てられて」はまさに絶望から希望へ・・・という雰囲気だったと思います。

by Cecilia (2010-08-06 21:32) 

yablinsky

若鷹タカ子さん、コメントありがとうございます。よく壱岐へ行かれるようですね。お気をつけてお帰りください。
by yablinsky (2010-08-06 23:21) 

yablinsky

Ceciliaさん、コメントありがとうございます。私は映画は強くないのですが、この映画も見たことがありませんでした。歌曲「私はこの世に捨てられて」は知らない歌曲です。早速、マーラー全集で聞いてみました。16枚目のCDに入ってました。歌詞がわからないのもう1つ理解できませんが、まさにマーラーらしい曲ですね。これから何度か聞き込んでみます。大地の歌は第9のジンクスや李白と関連していますのでまた記事にするつもりです。
by yablinsky (2010-08-06 23:26) 

yablinsky

江州石亭さん、まこ爺さん、niceありがとうございます。
by yablinsky (2010-08-06 23:27) 

若鷹タカ子

マンチ軍団さんからすぐお返事頂きました。
えらく有名なブロガーさまのようです。
私が購入していた「クレアキャット」にも猫さん写真掲載されているようです。

のだめ…あれ、そのような映画も見るのですか?
テレビは見ないのだろうと思っていたので
by 若鷹タカ子 (2010-08-06 23:35) 

yablinsky

tamanossimoさん、700nice目ありがとうございます。
by yablinsky (2010-08-06 23:57) 

yablinsky

若鷹タカ子さん、再コメントありがとうございます。やはり有名な方ですか。写真が只者でないことを物語ってます。のだめはむすめからの影響です。子供関係のものはいろいろ一緒に見ますよ。
by yablinsky (2010-08-07 00:06) 

若鷹タカ子

おはようございます、壱岐にいます。

>シュトレーゼマンは耳が聞こえなくなりつつあり

小澤さんも大病をなさいましたよね…
by 若鷹タカ子 (2010-08-07 06:55) 

yablinsky

若鷹タカ子さん、コメントありがとうございます。数日前(?)小澤さんが現場に復帰したというニュースが伝えられましたね。何よりです。
by yablinsky (2010-08-07 07:52) 

matcha

>今お持ちの印象を変えられる必要があるのでしょうか?
matcha さんの感性はご自身のものです。
若鷹タカ子さんの言葉に、誘われて再コメントします。
一言では、中々答えにくいんですよね。
僕のクラシック音楽との出会った要(かなめ)は、モーツァルトでもバッハでもなく、ベートーヴェンから礎を築き、「最高のベートーヴェンが聞きたい」から始めたんです。
なぜなら、後続の作曲家は、シューベルト、ブラームス、シューマンと進み、ドボルザークやチャイコフスキーに至るまで、全てはベートーヴェンの作曲家として手本となっているから・・・。ドボルザークの交響曲の9つという数字に悩まされたのも笑い話(ある意味ジンクス)になっているくらいで・・・。
そして選ぶ演奏家、ハンス・フォン・ビューロー、アルトゥール・ニキシュ、フルトヴェングラー、そしてカラヤンとベルリン・フィルの歴代の常任指揮者をベースとした事。
派生したのは、アルトゥーロ・トスカニーニで、彼の影響力は、すごかった。徹底的な楽譜至上主義である。
オットー・クレンペラーという指揮者がいるが、彼は指揮に対する理論や評価に優れている人で、ニキシュ、フルトヴェングラ、トスカニーニを実際に時代を歩んだ人である。http://sergejo.seesaa.net/article/114595867.html
ドイツ音楽を継承する指折りの指揮者が、マーラーの音楽に消極的であったこと。チェリビダッケという指揮者は、特にマーラーに対し、音楽そのものを嫌ったという。
決定的なのは、マーラーがニューヨーク・フィルの指揮者となり、その後にトスカニーニが後継に入った時
シューマンの交響曲の2番、3番の楽譜が、マーラーにより書き換えられていたことに、トスカニーニは怒り、「マーラーよ、恥を知れ。」と罵ったそうだ。
その事件が原因かは定かでないが、トスカニーニは、ニューヨーク・フィルを断念し、ボストンとニューヨーク・フィルとフィラデルフィアからトスカニーニのために選出された楽団員で、NBC交響楽団が結成された。
ちょっと長くなりましたが、マーラーというと僕にとって聴く機会もなかったし、僕を囲む演奏家は、マーラーとは縁が無い。唯一、カラヤンが晩年にマーラーを演奏している。
by matcha (2010-08-07 09:31) 

yablinsky

matchaさん、コメントありがとうございます。マーラーが評価されたのは1970年代ではないでしょうか。その前はマイナーな作曲家の一人だと聞いています。ニキシュ、フルトヴェングラ、トスカニーニはそこまで生きてないので、カラヤンのみがマーラーを評価できたということかもしれません。

マーラーは指揮者として当時は有名で、作曲家としてはそれほどでもなく、でも彼自身は、歴代の作曲家の巨匠の一人と思っていたのではないかと想像しています。そういう意味で、作曲家としての意識から楽譜至上主義ではなかったと思います。現に彼自身の交響曲は演奏するたびに書き換えています。

matchaさんにはいろいろ私の知らない世代の演奏家について教えていただきいつも感謝しております。私のマーラーの記事はファンの視点で書いていますので、どうしても肯定的なものになりがちですが、今後とも有益な討論を希望するところです。ありがとうございます。


by yablinsky (2010-08-07 19:39) 

Caelum

ぬぉ…2番、これDTMですか?職人凄いなぁ(;´д`)
擦弦楽器って、DTMにおいてサイキョーに難しい楽器ですよね
それを良くここまで…美しい音の流れを生み出せていると思います。
俺の粗悪な耳では、生との違いがわからないレベルです('`)
by Caelum (2010-08-08 04:15) 

yablinsky

Caelumさん、コメントありがとうございます。すごいDTMです。この方だけでなく凄腕の方は何人かいらっしゃるようです。弦楽器はソロではまだまだ使えないという印象ですが、オケならかなりのレベルになってきましたね。
by yablinsky (2010-08-08 08:08) 

yablinsky

うつマモルさん、niceありがとうございます。
by yablinsky (2010-08-08 08:09) 

ながぐつ

3番は、長いマーラーの交響曲の中でも最長であり、編成も声楽付きで大規模なことから、最も演奏頻度が少ないでしょうね。
ながぐつもたぶん、マーラーの交響曲の中で一番最後に聴いたと思います。バーンスタインのレコードを買って聴きました。当初は6楽章の良さはわかりませんでしたが、だいぶ大人になってからその良さがわかりました。

5番の4楽章のDTM、すばらしい! ここまでDTMでできるとは! 感服しました。

のだめで登場したこのアダージェット、このシーンでこれが来るか、と思いました。のだめと千秋と恋愛回想シーンとか、そっちのほうが合っているような・・・。でもこの曲は映画にも使われたし、最も有名な曲のひとつでしょうね。
by ながぐつ (2010-08-08 08:36) 

matcha

前のyablinskyさんの僕へのコメントの中で、何を仰っているのかわからない事があるんですが、宜しいでしょうか。
>彼自身は、歴代の作曲家の巨匠の一人と思っていたのではないかと想像しています。
「歴代の作曲家の巨匠」とマーラーが思っていたということですか?
「歴代の作曲家の巨匠」って、どういう人ですか?

>そういう意味で、作曲家としての意識から楽譜至上主義ではなかったと思います。現に彼自身の交響曲は演奏するたびに書き換えています。
「そういう意味で」というのは、どういう意味で?
「作曲家としての意識から楽譜至上主義ではなかった」とは、作曲家って、自分の曲を大事にするんじゃないですか?
「現に彼自身の交響曲は演奏するたびに書き換えています。」自分の楽譜を、書き換えてるから、シューマンのものは、書き換えてもいいんですか?
マーラーが、益々わからなくなってしまいました。
by matcha (2010-08-08 15:57) 

yablinsky

ながぐつさん、コメントありがとうございます。どうも第3番はマイナーなようです。個人的には最も好きなマーラーの交響曲で昔はよく聞いていました。第6楽章は若いときは前半は退屈で後半は感動していました。でも最近は変わりました。前半いいですね。

第5番の方はおっしゃるように一般的解釈では恋愛を表すようですが、私の感じ方では絶望でした。その感覚はのだめの映画の音楽を選曲した人と同じ感覚を持っていたようです。

by yablinsky (2010-08-08 22:24) 

yablinsky

matchaさん、再コメントありがとうございます。素直に解釈していただいてかまいません。私はマーラーの研究者でないので私の感ずるものを書きました。たとえばベートーヴェンと比することができる巨匠ということです。本人が自分で公言すると多少は問題かもしれませんが、公言していたとは聞いていません。ただ、第9番のジンクスを気にしたり、それに付随する発言から私が想像したものです。私自身はモーツァルト・ベートーヴェンにも劣らぬ大作曲家の一人と思っています。

楽譜に関しては私は変えていいと思っています。もちろん素人の考えですから、影響力もなければ、学術的バックボーンをありません。

たぶんマーラーが悪いというよりも私の考えが悪いのでしょうね。

by yablinsky (2010-08-08 22:32) 

yablinsky

ぼんぼちぼちぼちさん、niceありがとうございます。
by yablinsky (2010-08-08 23:12) 

nyankome

私も若い頃はオケでガンガンいく勢いのある曲が好きでした。
だいたい揚げられたのと同じような曲を聴いていました。
マーラーのアダージエットを聴くとヴィスコンティの映画を思い出します。
by nyankome (2010-08-14 10:34) 

yablinsky

nyankomeさん、コメントありがとうございます。この映画見たことがないのです。この記事を書いて存在を始めて知りました。機会を作ってみたいと思います。

やはり若いときはがんがん勢いがある方が一緒に盛り上がることができいいですよね。今後とも年齢とともに音楽の趣味が変わること自体を楽しんでいけたらと思います。
by yablinsky (2010-08-14 14:33) 

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