ビドロの演奏研究 その1 [奏法・楽曲研究]

ムソルグスキ ビドロ「展覧会の絵」より を先日アップ[1]しましたが、その演奏の具体的方法を公開します。これまでに公開してきた演奏では音符に1つ1つを調整してきましたが、今回はかなりいい加減です。基本的には左手は機械的な方が格好いいと判断しました。以下、いつも使っているStudio ftn Score Editor classicの画面です。

bydlo01.jpg
(譜面をクリックいただければ拡大します)

1、最初は静かに始まるが最初の音は長め。テンポが45に落ちている。
2、第3小節は上り坂なので、テンポを速め、そしてだんだん強く。
3、第3小節最後の音符のテンポを45に下げる。これで第4小節の最初の音が遅れて演奏される。「間」の演出。
4、第4、5小節の最後の休符のテンポを下げ、すかさずテンポをもとに戻しているのは「間」の演出。
5、第5小節、音が高くなるとちょっと弱め。
6、このページ驚くことに左手は最初の部分を抑えたのみであとは無調整。この曲は機械的伴奏がよいと判断。

bydlo02.jpg
(譜面をクリックいただければ拡大します)

7、画面のページの第2小節(本当は第8小節)の最後、第4小節の最初の音はスラーの最後とみなして弱く演奏。
8.第5,6小節は音が高くなり、だんだん大きく。
9、スラーがらみの一部以外、ここも左手はほとんど無調整。
10、第4小節、極端なテンポ変化は「間」の演出。

bydlo03.jpg
(譜面をクリックいただければ拡大します)

11、このページでも第3小節から第4小節、第6小節のテンポの大きな変化は「間」の演出。牛の疲れがあらわせていますでしょうか。
12、ここでも左手は無調節。いいのか!

bydlo04.jpg
(譜面をクリックいただければ拡大します)

13、第2小節は曲が変わる前なのでテンポを下げる。
14、第3小節からやっとペダルの登場。そして演奏は強くしました。といってもフォルテ。
15、左手にアルペジオが入る。大きな時間差だとどうしても違和感を持ち、小さな時間差でアルペジオを演奏。
16、このとき一番低い音は4分音符なので重ねて、別に演奏。重ねないとアルペジオが崩れるので苦心の作。しかし、ここはバグか?ノートオフが効いてしまっている。
17、第4,6小節の最後など、スラー的なときはそのスラーの最後は弱く。

bydlo05.jpg
(譜面をクリックいただければ拡大します)

18、前頁からこのページ第2小節までとにかくがんがん行ってます。
19、あまりにがんがん行くのも興ざめなので第4,5小節あたりでは変化をつける。

[関連情報]
[1] ムソルグスキー : ビドロ 「展覧会の絵」より, 10/06/17


2010-06-20 00:00  nice!(9)  コメント(19)  トラックバック(0) 
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yablinsky

tamanossimoさん、niceありがとうございます。
by yablinsky (2010-06-20 11:08) 

ワカタカタカコ

達成感 みニャさんのコメントもスゴィ。 blog,1年経過シテナィノニ、重いデス容量 コチラはドウ?
by ワカタカタカコ (2010-06-20 18:58) 

matcha

yablinskyさんのこの解析力と持久力には、脱帽ですよ。すごいですねぇ。
僕もひとつ気になる記事があったので引用します。
お役に立てればと思います。
-----------以下、引用---------------------------
ビドロとはポーランド語で、「牛車」と「家畜のように虐げられた人々」の意味がある。スタソフの楽譜へのコメントは「雄牛がつながれた大きな車輪の付いたポーランドの荷車」となっている。
自筆の楽譜ではこの曲のエンディングはずっとフォルテシモのままなのだそうだが、「牛車」が遠くへ去って行くのをイメージしてか、スタソフの出版した楽譜にはリムスキーコルサコフの強弱記号指示により、ディミネンドしてピアニシモで終わる。ラヴェルの編曲でも同様である。
しかし、荷馬車や牛の絵はとうとう発見されなかった。ムソルグスキーの自筆の楽譜には最初につけた題名をナイフで削り取り、書き直した痕がある。題名の意味をムソルグスキーがスタソフに問われた時、「我々の間では『牛車』ということにしておこう」と答えたという。つまり、「本当は『牛車』ではなく、『圧政に苦しむポーランド人達』だが、『牛車』ということにしておこう」という意味である。スタソフは真意を知りながら、いわば「政治的配慮」をして、楽譜出版の際にわざわざ「ポーランドの荷車」と説明を付けたのだ。
こういう観点から、発見された「ポーランドの反乱」というタイトルの鉛筆スケッチがムソルグスキーをしてこの作品を作らせたと推理される。ならばギロチンのむごたらしさの描かれる場面は最後まで怒りのフォルテシモがふさわしいかもしれない・・・
------------引用 終り----------------
どうです。悪政による人々の惨い生活、苦しむ民衆、ポーランドの反乱(民衆の爆発)・・
ムソルグスキーは、楽譜を最後までフォルテシモしていた訳。サスペンスでしょう。

by matcha (2010-06-20 20:24) 

yablinsky

ワカタカタカコさん、コメントありがとうございます。ブログをはじめて半年ちょっと、私の宝物は大変良質なコメントをいただける人々です。もちろんワカタカタカコさんにも心から感謝しております。しかし、クラシックファンではありますが、演奏活動はしたことないので、話題が切れそうで苦労しております。
by yablinsky (2010-06-20 20:58) 

yablinsky

matchaさん、コメントありがとうございます。確かに持久力は必要ですね。でも電子ピアノで自分の演奏ができるのが楽しみです。

牛車に関する資料ありがとうございます。曲調からして『圧政に苦しむポーランド人達』というのは納得できます。牛車には私にも疑問がありました。もし、絵を見て音楽を作ったら、静止画を見たわけで、だんだん近づいてきて、離れていくという動画的な印象は考えにくいのです。そういう意味では静止画の感動なら最後までフォルテシモでもおかしくないと思います。

いつもいろいろ教えていただき感謝しております。

by yablinsky (2010-06-20 21:07) 

ぱえ

DTMの演奏についてはあまり存じ上げないのですが、
「このように作っているんだなぁ・・・」
と興味深く読ませて頂きました。

matcha さんの引用もとても興味深く読ませて頂きました。
左手の和音ですが、なんというか、脈拍のような感じだと前から思っていました。
とてもしんどい時って、自分の脈が体の中で響いてくる時てあるのですが、
ビドロの左手はそれに似ているような気がします。
matcha さんの引用を読んでなんとなく納得いったような・・・。私的には。

エンディングをフォルテのままで演奏するとどんな感じになるんでしょうね。。。
全く違う印象になるかもしれません。。。
by ぱえ (2010-06-20 21:14) 

yablinsky

ぱえさん、コメントありがとうございます。DTMでは通常ピアノロールというもので演奏を作るのが通常です。このように楽譜で入力するのは私の使っているstudio ftn score editorの特徴です。そういう意味では楽譜で入力する人は少数派です。

本文には左手はロックのドラムだと書きましたが、私にとってはロックのドラムは心臓の鼓動です。そういう意味でぱえさんとこの曲に対する印象は近いのではないでしょうか。

最後までフォルテの演奏、私も気になります。その時間が私にあるかどうか・・・・

by yablinsky (2010-06-20 21:29) 

nyankome

なるほどね~。
やはり凄い手間がかかっているのですね。
でも手をかければかけるほど、着実に自分の思ったイメージに近づいていきますからやり甲斐があるというものです。
私は壮大な「キエフの大門」も好きです。
ギターでは迫力不足ですね。
by nyankome (2010-06-20 22:29) 

Enrique

演奏の種明かしですね。
楽譜での入力は少数派とのことですが,わかりやすくていいですね。手で演奏する人にもとっても参考になるのでは無いでしょうか?普通の楽譜にはここまで詳細に演奏関する情報書き込まれませんので。
by Enrique (2010-06-20 22:33) 

yablinsky

nyankomeさん、コメントありがとうございます。今回はいつもほどは手間をかけてませんが、それでもテンポ変化や強弱変化は頻繁に変化させる必要があります。「キエフの大門」も壮大でいいですね。私もビドロの次に好きです。ギターの演奏は何曲か参考にしましたが、ギタリストの技術にびっくりしました。
by yablinsky (2010-06-20 23:43) 

yablinsky

Enriqueさん、コメントありがとうございます。前にも同じようなコメントをしたような気がしますが、仕事ならこのような作業手順は秘密でしょうが、趣味なのであっけらかんと公開です。そうなんですよ。ピアノを弾く人に見てもらいたいのです。彼らの目にどう映るのでしょうか。強弱は意識するでしょうが、細かいテンポ変化は無意識にやっているはずなので、そこのあたりが再認識できるかもしれません。いずれにしてもピアノを弾く人に見てもらうためには私ももっと腕を上げなければ・・・
by yablinsky (2010-06-20 23:48) 

yablinsky

アヨアン・イゴカーさん、Caelumさん、niceありがとうございます。

by yablinsky (2010-06-21 06:54) 

ながぐつ

ずいぶんと細かなテンポ設定をされているのにびっくりしました。
この微妙な揺れが、まるでプロが演奏しているのかと思わせるような、演奏を生み出していたのですね。さすがです。

ところでこのソフトにはピアノペダルの設定とかいうオプションがあるのでしょうか。リバーブをかけて音を長めに維持するようなものなのでしょうか。

by ながぐつ (2010-06-23 06:00) 

yablinsky

ながぐつさん、このような記事にコメントありがとうございます。微妙なテンポに揺れは人間は本能的にやっているのでしょうね。楽譜にペダルマークがあるの思うのですが、ペダルはできます。しかし現在は、ハーフペダルはできませんが、たぶん近々できるようになると思います。また、ペダルを踏むタイミングは音符の位置です。音符より少し送れて踏む設定は現在できません。たぶんこれも近々できるのではないかと思います。私の音源は安い電子ピアノなのでペダルの機能は音を伸ばす機能です。他の弦も振動させるようにはなってないと思います。最近の高級電子ピアノにはついているのでしょうか。ちょっと調べていません。そういう意味ではリバーブと同じなのでしょうかね。
by yablinsky (2010-06-23 07:37) 

ワカタカタカコ

圧政かー。遠まわしに牛車 遠まわしノ、政治批判ハ、映画 「天井桟敷の人々」、などニモ、アリマス
by ワカタカタカコ (2010-06-23 19:27) 

yablinsky

ワカタカタカコさん、コメントありがとうございます。本当かどうか。いかにもそんな曲調です。それにしてもこの曲いい曲です。
by yablinsky (2010-06-23 21:08) 

Cecilia

間を演出するのはそのようにしてやるのですね。
細かい工夫、なるほど~と思いながら拝見させていただきました。
by Cecilia (2010-06-24 08:17) 

yablinsky

Ceciliaさん、コメントありがとうございます。今回の仕事は雑なのでお恥ずかしい限りです。発表してからバグも見つかりましたので、もう少し手を入れてみたいと考えています。
by yablinsky (2010-06-28 00:03) 

yablinsky

optimistさん、niceありがとうございます。
by yablinsky (2010-06-28 00:04) 

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