映画「マーラー」 [マーラー]

いつもこのブログをご訪問いただくワカタカタカコさんから「マーラー」という映画を紹介してもらっていました。マーラーファンですが、映画ファンではないので見たことがありませんでしたので、レンタルしてみました。

映画「マーラー」(1974)
監督:ケン・ラッセル

これは誰にでも薦める映画ではありません。面白くないというわけでなく、一言で言えば、アバンギャルドです。アバンギャルドでもいかにも70年代風です。その後のハリウッドを中心とした映画の発展を見ていると、やはり一般大衆は映画にはリアリズムを求めていることを市場が物語っています。SFであっても、実際にありそうな雰囲気が大切で、一般聴衆を引き込むことができます。

この映画、いかにも前衛的で、はじめから家が燃えたり、カイコの繭から妻のアルマが生まれ、マーラーは石だし、映画にリアリティ以上の芸術を求める人向けです。でも話がめちゃくしゃではなく、ちゃんとマーラーの人生を描いています。マーラーファンとしてみてよかったと思いました。最近でもNHKがたまにこの映画のような前衛的ドラマをつくることがありますが、たぶん視聴率は取れてないでしょうね。

交響曲第9番と作曲家の死を気にしていたマーラー。職を得るために改宗したマーラー。なき子をしのぶ歌を作曲し、本当に子供を失ったマーラー。など主要なところは描いています。また、アルマの存在はこの映画の中では大きく描かれています。実際、アルマがグスタフ亡き後マーラーについて語ったものが、マーラー像を作り上げていますので、順当なところです。

映画ファンでないので、十分に論評できません。映画やこの作品についてご存知の方はいろいろ教えてください。

追伸:nyankomeさんのコメントにコメントしていて内容を追加することにしました。

この映画にはBGMとしてマーラーの交響曲を中心とした曲が使われています。そのほかワグナーも一部使われています。マーラーファンがその音楽を楽しむためにこの映画を見るという楽しみ方もあります。また、マーラーの音楽を知りたい人が入門するにもよいかもしれません。

ところで、1つ感じたのはマーラーの交響曲は、マーラー自身の人生を描くのにも壮大すぎるということです。


2010-08-22 00:00  nice!(10)  コメント(19)  トラックバック(0) 
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nyankome

この映画を初めて観たときはまだDVDがなくて、VHSでした。
マーラーの人生における事件を象徴的に描いていますね。
私の印象に残っているのはコジマ・ワーグナーとマーラーが竜退治に出かけるシーンです。
手元にケン・ラッセルがこの映画について語った記事があるのですが、興味深い部分を引用しておきます。
「映画の中でアルマ・マーラーが着る衣装はどれも、象徴的な意味をもっている。-中略-私の映画は、単に私がマーラーの人生を思い、彼の音楽を聴いた時に感じた事について表現したものにすぎない。決して決定的な見方などではないのだ。マーラーの音楽には、それを愛する人々と同じ数だけ、ミステリーが存在する。私は、自分もその一人である事を喜んで公言する者である。」
by nyankome (2010-08-22 01:23) 

Cecilia

70年代の映画だったのですね。
私が観たのは80年代後半でしたのでてっきりそのころの映画だと思っていました。
竜退治の部分はもちろん鮮明に覚えています。
門前トラビスさんが最近この映画について触れていらっしゃいました。
http://monzen-t.blog.so-net.ne.jp/2010-08-07
by Cecilia (2010-08-22 08:07) 

Caelum

yablinskyさんの内容解説を見ると、もの凄く興味が沸きます…
人の人生って、おいそれと映画に出来る程も簡単なものでないですし
それならばいっその事、SFタッチで描いてくれた方がしっくり来ます。

昨今の映画は、お涙頂戴モノならば売れるという風潮があるために
内容が陳腐化していますし、もっとこのようなアプローチを取り入れた
斬新な映画を見たいなぁと思う今日この頃です。
by Caelum (2010-08-22 10:03) 

yablinsky

nyankomeさん、コメントありがとうございます。竜退治にしても現実的にはありえないことですね。これを受け入れられる人とそうでない人がいるでしょうね。マーラーの人生に迫っているのは確かでしょう。興味深い引用をありがとうございます。

記事に書いていなかったのですが、マーラーの音楽は彼自身の人生を描くにしても壮大すぎるという印象です。記事に追加しておきます。
by yablinsky (2010-08-22 10:08) 

yablinsky

Ceciliaさん、コメントありがとうございます。私が印象的だったのは繭からアルマが出てくるところですね。門前トラビスさんの記事紹介ありがとうございます。マーラーの交響曲がBGMとして使われていますが、交響曲第3番も最初の方で使われていました。交響曲第3番に関しても近々記事にしたいのですが、適当な動画が見つからず困っています。
by yablinsky (2010-08-22 10:15) 

yablinsky

Caelumさん、コメントありがとうございます。私の解説で興味をもたれたのであれば、楽しめると思います。記事にも書きましたが、万人向きではありません。

私は映画ファンではありませんので、映画は語れません。ハリウッドでもネタ切れのようですね。このような描画法ももう一度見直してもよい時期かもしれません。

by yablinsky (2010-08-22 10:20) 

yablinsky

江州石亭さん、tamanossimoさん、niceありがとうございます。
by yablinsky (2010-08-22 14:18) 

若鷹タカコ

おお、ついにレビューが。

>一般大衆は映画にはリアリズムを求めていることを市場が物語っています

そうだけど、例えば「ホームアローン」などは子供が階段をジェットコースター感覚で滑るとかリアルじゃないけど、ハリウッドの作り方は。

マーラー映画の話に戻って。
アルマが自分の音楽的才能について悩む場面はフェミニズム的というか、女性だからあの時代は…というのもあるし、愛人は音楽的才能にあふれた女性なのでその双方の葛藤、ここら辺は割と女性観客を意識した、ハリウッド的であると感じました。
あ、それとアルマの愛人についての描写も。



by 若鷹タカコ (2010-08-22 14:57) 

クリボー

こんににちは!このDVDを所有しております。僕の大好きな映画です。上記URLには、このアルマの僕の記事のを載せておきました。確か使用されているのがハイティンク、コンセルトヘボウ管のものですね。僕は傑作だと思います。もちろんマーラーに興味が無い方には、そうではないかもしれません。B級と思う人もいるかも…。そしてマーラーの作曲小屋や実際に作曲した曲などの時代背景も、実際とは前後しているようです。でも僕には傑作です。映画ファンでなくても、自分のお感じになったことを大切にされた方が、芸術に対する先入観から解放されて良いような気がします。好きなものは好き、嫌いなものは嫌い。まずそれが自分の根本の感性だから…。もちろん専門家の御意見により知的な部分の刺激によって評価が変わることはもちろんだと思います。僕は前衛的とは感じなかったのですが、彼の音楽と人生を混沌とユーモアを通してうまく表現していると思います。こんな冷静な感想はちょっと合わないですね。知らないことを…とのことなので、この映画の一部は「ベニスに死す」の映像と第5番のアダージェットのパロディがありますね。、この監督は確か伝記物の映画を良く作っていたと思います。でもこの金髪アルマ、可愛いですね。(^.^)/~~~
by クリボー (2010-08-22 19:16) 

matcha

映画は見ていないのですが、yablinskyさん、nyankomeさんなどのコメントをお読みして、見てみたいと思います。
その前に、マーラーについてよく知ってからとも思います。
マーラーの音楽の世界とは、どんなものか。
これを自分なりにはっきりしてくれば、見ようと思っております。ご紹介、有難うございます。
by matcha (2010-08-22 21:15) 

yablinsky

若鷹タカコさん、コメントありがとうございます。ホームアローンはあまり集中してみたことがないのですが、うちの子供たちもうちの小さな急傾斜の階段をジェットコースターのように滑り降ります。

今回の記事ではアルマについてそれほど語りませんでした。彼女が才能豊かだったのが、彼女のとマーラーの関係を微妙にした面もありますね。また、年齢差が大きいのもいろいろ複雑だったのでしょうね。アルマが死んだのは1964年だということをご存知でしたか?
by yablinsky (2010-08-22 22:35) 

yablinsky

クリボーさん、コメントありがとうございます。DVDを所有されておられたのですね。この映画のファンの方にはちょっと失礼な記事を書いてしまったと反省してしまいます。よい映画で忘れられない映画なのですが、私は映画についてこれまで考えてこなかったので、映画を芸術としてなかなか鑑賞できません。今回、この映画の見方を教えていただき感謝しております。また、しばらく時間をおいてからもう一度見てみたいと思います。

記事も読みました。昔のことを今の価値観では計れませんので、なかなかどうコメントしていいかわかりません。引き続き考えてゆきたいと思います。適切なコメントができず失礼します。
by yablinsky (2010-08-22 22:49) 

yablinsky

matchaさん、コメントありがとうございます。私のマーラーシリーズは、生誕150年の今年に私がたまたまマーラーファンだったので始めました。マーラーファン以外の方にも斜め読みしていただければ幸いです。マーラーの音楽はベートーヴェンからすれば、ちょっとだけアバンギャルドです。ベートーヴェンは好きな人かどうでもよい人に分類でき、嫌いな人は聞いたことがありません。その点、マーラーは嫌いな人が一定数いるのは事実です。これからもマーラー記事に緩やかにお付き合い願えれば幸いです。
by yablinsky (2010-08-22 22:56) 

yablinsky

PENGUINGさん、アヨアン・イゴカーさん、niceありがとうございます。

by yablinsky (2010-08-23 06:48) 

若鷹タカ子

こんにちは
アルマは実際の写真イメージと女優さんがちょっと違うけど、
どちらも美人ですね。
アルマが音楽的才能を諦める?シーン、なぜか私はクララ・シューマンと勘違いしていて、この度パンフを読み返してあら、マーラー夫人だったか、と。
クララ・シューマン映画もありましたし、ロダンの女弟子カミーユ・クローデール(ポールクロデールの姉)
映画もですが、「女性の方が才能あったのに!」系のフェミニズム作品?製作公開が時期が似てるかもしれません。
興味のある方、調べてみてください。
ではまた

by 若鷹タカ子 (2010-08-23 18:14) 

yablinsky

若鷹タカ子さん、コメントありがとうございます。女優がかわいい感じで、本物はほんものの美人だとおもいます。結婚したときすでもマーラーは名声を得かかっていましたので、アルマはマーラーというブランドを手に入れたのですが、それと引き換えに家庭に押し込められたというところでしょうか。現在の価値観からすればかわいそうなのですが、当時の価値観ではグスタフが横暴というわけではないと思います。
by yablinsky (2010-08-23 23:29) 

ながぐつ

遅くなってしまいました。
この映画ながぐつは封切りの時に映画館で1回、あと5年前にビデオで1回見ています。
映画のことはながぐつも素人なので論評できませんが、やはりBGMが効果的に使われていましたね。
特に1番ながぐつが強烈な印象に残っているのは、冒頭の作曲小屋が燃えるシーンで、そこに第10番アダージョの終盤の強烈な不協和音が使われているところです。10番についてはyablinskyさんのマーラーレポートの最後に登場することを期待し、そのときにコメントしたいと思います。
by ながぐつ (2010-08-26 23:37) 

yablinsky

ながぐつさん、大阪からコメントありがとうございます。作品小屋はどうして燃えたのでしょうか。それともどうしてなどと考えていけない映画なのでしょうか。難しいですね。国語が得意な方なら誰でもわかるのでしょうかね。

交響曲第10番は今の私には評論できません。どこまでマーラーの作品か私は現在把握していませんので・・・
by yablinsky (2010-08-27 07:04) 

yablinsky

cfpさん、niceありがとうございます。
by yablinsky (2010-08-29 17:52) 

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