ピアノに音色はない!? [随想]

 かなり、刺激的な表題を付けてみました。たぶん、読者の皆様にけんかを売っているような表題です。実は先日、ピアノの購入計画[1]に関する記事を書いたのですが、それはうちの子どもにピアノの音色を理解させるためであると理由を書きました。それを受けて江州石亭さんもピアノの音色に関して記事をお書きでした。この記事はもっと後で記事にするつもりでしたが、タイミングを考え、あえて!今!投稿します!

 最終的にはピアノに音色があることは、認めているのですが、まず、条件を設定します。

1、調律された同じピアノをど素人の私と、高名なピアニストが鍵盤を操作します。
2,このとき、如何なるペダル操作は行わないものとします。
3,この時、2人が鍵盤を押します。ピアニストはピアニストの全経験と全人生をかけてたった1つの鍵盤を打鍵。そして私は何も考えずピアニストが打鍵した鍵盤を打鍵。そのときたまたま鍵盤の最終速度が一緒だったとします。

 一方、ハンマーが弦をたたくとき、ハンマーは人間が鍵盤を最も深く押し切った時には人間の手とつながっているものの、その時点では音は鳴らず、人間の手とのつながりを離れて弦に衝突します。その運動はニュートンの第2法則により記述され、変位で運動方程式を記述したときは、初期値は2つあり、1つはハンマーが手の制御から離れる点の位置であり、この位置は変更しようがないものです。もう1つは初期速度で、これはたまたま2人が偶然に同じ速度を与えました。そうすれば、力学の法則に則って、ハンマーは同じ運動をし、弦をたたき、同じ音が出ます。

 もし、同じ音がでないと主張するなら、それは物理学との戦いになります。ピアニストがよい音を出すなら、ニュートン物理学が間違っていると言うことです。つまり、このような単純な状況下ではピアノには音色はないというのが私の主張です。

 このような単純な状況下では、初期速度のみが、実際に人間が操作できるパラメータということになります。強弱以外に音の種類はないのです。もちろん、ペダルのように実際に人間が直接弦に触れる場合は音色というものがあるのは知っていますし、鍵盤から指をはずすときのダンパー入れ方でも音色が出るのは知っています。

 実はpiano1001[2]さんもエッセイに同じことをお書きです。piano1001さんが先に書いたので、私が考えを盗んだようなものですが、特に理系のひとは自然に同じ考えに到達するのではないでしょうか。特に芸術系にひとに誤解があるようなので、衝突を覚悟して記事にしてみました。このような単純な状況下で、打鍵だけでもこうやって音色を出すという情報がありましたら、教えてください。

 実際の演奏は、もちろん初期速度による強弱だけではでません。打鍵のタイミング、テンポ変化、強弱やペダル操作等が複雑に組み合わされて、現れるもので、先の2人では、ピアニストは皆をほれぼれとさせる音色で演奏ができる反面、私の演奏はだれも相手にしません。

PS1: 私が理系だとばれてしましましたね。でもこのブログに来る人は、なぜか理系の人が多いのです(少なく見積もっても5人の方)。ふしぎですね。

PS2: DTMで強弱のことをヴェロシティ(速度)と言うのはこういう訳だとおもいます。

[関連情報]
[1] ピアノ購入計画, 10/01/23
[2]piano1001, 10/01/19


2010-01-27 00:00  nice!(5)  コメント(15)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

nice! 5

コメント 15

Caelum

ピアノの機構上の特徴っスね。
「音色が無い」っていうと、ちょっと悪い事のように聞こえてしまうかも('w`)

打鍵についてのみという事であれば、最終速度が同じなら
ハンマーを上げる力は一緒ですから、同じ音色ですよね。
変化が現れるとしたら、打鍵時のブレから生ずる振動が
ハンマーに伝わる事によるものでしょう。
他には、打鍵時に底を叩く振動も音色に作用しますよね。
これらを「音色」と認めるかは微妙なトコロですが
波形の変化を音色とするなら、音色なのかなぁと。
by Caelum (2010-01-27 00:32) 

Caelum

連続ですみません('`)
俺も「打鍵のみでは音色の変化は無い」派です。
by Caelum (2010-01-27 00:37) 

yablinsky

Caelumさん、コメントありがとうございます。そうですね。「音色の変化はない」と言う表現が正しそうですね。議論になることを覚悟の上で投稿してみました。どうなりますか。
by yablinsky (2010-01-27 00:52) 

matcha

おはようございます。
yablinskyさん、いつもお世話になってます。
なんか難しいことはよくわからないんですけど、音響学での「音色」の定義や人の耳による聞き分けなど、「音色」に関する議論は、起きて当然のような気がします。
もともと、音の三要素である「強弱」「高低」そして「音色」とはっきり分けられる訳が今一よくわかりません。先の2つは、定量的なので議論はないでしょうけど、あとを「音色」に押し付けているような気がします。
ピアノで言えば、スタインウェイ を初めベーゼンドルファやベヒシュタインなど、厳密に言えば「音色」は違うはず・・。
yablinskyさんの仰る演奏家の「奏法」も「音色」を変えるという論もあります。
もっと深い学術的な理論になると全くわからないんで・・・(汗)>
耳で感じる主観から言えば、ピアノには他の楽器との違いが「音色」にはありますが、演奏により「生き物のように踊りだす」というのが、僕の感想です。
有難うございました。

by matcha (2010-01-27 10:50) 

Cecilia

ピアノに関して詳しいわけではないのですが、以前ピアノ奏法に関する本を図書館から借りて読んだときにyablinskyさんがおっしゃっていることと同じようなことが書いてあったように記憶しています。
ずばり同じことではないのかもしれませんが私の記憶に間違いがなければそうです。(私の中で関連付けているだけかもしれませんが。)
ピアノを弾くときの過剰な身体の動きに疑問があり、その本で納得した記憶があります。
打鍵した後にいくら押し込むような動作をしても音色は変わらないという話だったと思いますが・・・。
by Cecilia (2010-01-27 15:04) 

nyankome

私も理系です。(^_^;)
ところで、同じ条件の元でそのような実験をしたときには同じ音が出ると思います。ピアノは一年しかやっていないのでこれ以上は何とも言えません。
楽器の音には綺麗な音と汚い音があって、これは波形を見れば明らかなことです。常に自分の思い描いた音を出せるのがプロで、鍛錬のたまものだと思います。
by nyankome (2010-01-27 18:09) 

ワカタカタカコ

ほほー。2channelネタみたい。過剰な体の動き、確かに意味無し
by ワカタカタカコ (2010-01-27 18:50) 

江州石亭

ちょっと遅くなりまして^^;;
Yablinskyさんの上げられた、3つの条件ですが、もう一つピアニストの方に規制を入れてやらねばならないかも知れませんね。
鍵盤を打鍵した際に脱力って行為をさせないこと。
この規制を入れれば、シロウトだってプロだって同じ音しか出せないはずですよね。
もし音の変化があり得るとするとその辺りにあるかも?
(物理は超苦手でしたから、化学ほどスパッと説明できないですが)仮に完全弾性衝突だと指は鍵盤を押したまま止まって、ハンマーが弦を叩いた状態で止まる(運動量保存則というのになるのかな?)。
衝撃音として金属的な残響を残す(のかな?)
超一流ともなると打鍵時に脱力して非弾性衝突(粘弾性衝突?)のような現象を与えはしまいかと(エネルギーの一部が弦の振動などをもたらすとか)。そうすると微妙な音の揺れを出せる???
何度も書きますが物理は全くデタラメなので言葉の使い方自体が間違えているかも知れませんので、その時は改めてくださいねm@m
それに、あんまり難しいことを考えずに音楽したいものですから^^

by 江州石亭 (2010-01-27 23:14) 

yablinsky

matchaさん、コメントありがとうございます。趣味なので音響学までは調べていませんでした。音響は詳しくないのです。機会を見つけて調べて見たいと思います。いろいろ調べるのは楽しいですからね。演奏により「生き物のように踊りだす」って良い表現ですね。打鍵された音が時間方向に絡み合って音色と呼ばれるものが生まれるものと考えます。
by yablinsky (2010-01-27 23:26) 

yablinsky

Ceciliaさん、変な記事にコメントありがとうございます。奏法の本ですね。気をつけてみます。ピアニストの人が打鍵後、鍵盤をぐりぐり押している姿はよく見かけます。物理的にはあれは意味のないことだと思います。しかしながら、次の演奏への「間」を作っているとか、次の演奏へ気力を込めているとか解釈すれば、否定するつもりはありません。何事も気を入れるということは大事ですからね。ピアニスト自体はどう思っているのでしょうかね。
by yablinsky (2010-01-27 23:33) 

yablinsky

nyankomeさん、コメントありがとうございます。nyankomeさんも理系でしたか。
「常に自分の思い描いた音を出せるのがプロで、鍛錬のたまもの」
正にそうですよね。複雑な演奏の中、狙った強さの音を寸分違わず出すというのはすごいと思います。
by yablinsky (2010-01-27 23:37) 

yablinsky

たかこさん、コメントありがとうございます。たしかに力学的には不要かもしれませんね。でも人間はロボットでないので無駄なものも必要かもしれません。ピアニスト自体がのらないと、演奏も良いものにならないかもしれませんね。
by yablinsky (2010-01-27 23:40) 

yablinsky

江州石亭さん、変な議論に巻き込んでしまってほんとうにすみません。グランドピアノの場合、指で鍵盤を最後まで押し切った状態で、まだ、ハンマーは弦に触れて折らず、音はなりません。人はこれ以上鍵盤を押し込めることはできませんので、その時点からハンマーは指の制御を離れ、軸まわりに回転運動を始め、弦にあたります。音が出るときにはハンマーは人が制御できないと思われます。私の議論ではハンマーは剛体運動的にとらえていましたが、弾性体としてとらえなければならないなら、初速度の他に、加速度も関係している可能性はあります。そうすれば、違った音が出るかどうかわかりません。脱力する奏法は初速度の制御法だと思っていましたが、もしかしたら、加速度の制御法かもしれませんね。いずれにしても、いろいろ馬鹿なことを考えているのは楽しものです。
by yablinsky (2010-01-27 23:57) 

ぱえ

ブーニンのコンサートを見た時ですが、
打鍵後、押し込むような動作を頻繁にしていて印象的でした。
そんなブーニンの音色は優しくて豊かな音でした。
打鍵後、押し込むような動作をしないピアニストとブーニンの音の比較をしたことがないので何とも言えないですが、打鍵後の動作って何か意味があるのかもしれません。

私も理系ですが、難しいことは良く分かりません~^^;
by ぱえ (2010-01-31 03:30) 

yablinsky

ぱえさん、コメントありがとうございます。ぱえさんは元SEなんですよね。「少なく見積もっても5人の方」の1人に入れておりましたよ。

現在のところ、打鍵後の動作はCeciliaさんのコメントへの返事に書いたとおりの解釈です。どうしてもあれが直接意味があるとは思えません。

by yablinsky (2010-01-31 11:43) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証: 下の画像に表示されている文字を入力してください。

 

このブログの更新情報が届きます

すでにブログをお持ちの方は[こちら]


この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。