読書とそのBGM [随想]

最近は読書をしなくなりなりました。抽象的な表現ですが、どちらかと言えば今はアウトプットの時期と思っております。そんな私も以前は読書は結構好きでした。子どもから若い頃は読書にスピードと量を求めておりましたが、ある時期から、ゆっくり時間を掛けて味わって読むようになりました。多くの本を求めるのでなく、多くの感動を求めるようになったと言うことです。小学生が本を読む速度で読みます。はじめはいらいらしましたが、慣れるとテレビのナレーションのようでだんだん心地よくなります。

私の読書の傾向は一口で言えば古典です。例を挙げておきます。

ホメロス:イーリアス、オデゥセイア
古事記、日本書紀
旧約聖書、新約聖書
仏典の数々
エジプトの古文書
ギリシャ神話や古代ギリシャ時代の書籍

この分野の専門家でないので、原語で読める訳ではありません。日本語訳のものを読みます。上のものは岩波文庫でかなりそろいます。これらの古典には読み方があります。古代人のペースで読むべきです。昔の人は今のようなスピード社会で生きていません。現代人が古典を読むとものすごく退屈です。遅々として話が進みません。古代人の時間感覚を持つことさえできれば、そこにはすばらしいファンタジーの世界が広がっているのです。加えて解説すれば、日本の古典はあっさりしすぎてます。もっと時間を掛けて詳しく解説して感動させて欲しいところです。

さて、読書するとき重要なのがBGMです。適切なBGMはより感動を増します。私の趣味からどうしてもクラシックを選びますが、典型的な例をあげて見ましょう。

ケルト人の言い伝えで、12世紀のフランスではやり、後の西洋の恋愛観の
基礎を気づいたとされる書。それは

パティエ編、佐藤輝夫訳: トリスタン・イズー物語, 岩波文庫

です。この本を読んだときは、まず、古の人の時間感覚になっていますので、すぐに読み始めることはしませんでした。まず、ワグナーの「トリスタンとイゾルデ」を購入して、それから、これを聞きながら、ゆっくりした古典の世界へ入っていきました。12世紀なので、上記の古典と比べれば、心地よいペースで話が進みます。

Wagner : Tristan und Isolde
ルネ・コロ テノール
マーガレット・プライス ソプラノ
ライプチヒ放送合唱団
ドレスデン国立管弦楽団
カルロス・クライバー指揮
POCG-3064

Leighton-Tristan_and_Isolde-1902.jpg
wikipediaより トリスタンとイゾルデ(エドモンド・レイトン画)

古典を読むときは、私のお気に入りのBGMはワグナーとマーラーです。古典はヒーローの世界、ヒロインの世界です。とくに悲劇が感動を呼びます。そしてワグナーとマーラーがしっかりとその感動を増幅してくれます。

本日の記事では私の読書の方法とそのときのBGMが中心で、ワグナーの「トリスタンとイゾルデ」や12世紀の古典「トリスタンとイズー」については語りませんでしたが、機会を設けてまた、記事を書きたいと思います。皆さんはどのように読書されていますか。


2010-07-22 23:00  nice!(12)  コメント(24)  トラックバック(1) 
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optimist

私の読書スタイルは、速読とまではいきませんが、結構サッと読んじゃいます。
その上で、気に入った本を何度も読み返す事が多いです。
でも年齢と共に読み方が変わってくるというのは、納得できます。
by optimist (2010-07-23 00:16) 

yablinsky

optimistさん、コメントありがとうございます。大人になるにしたがってサッと読むというのが普通ですよね。私の読み方が普通でないと思われます。私も専門書など知識目的のやさしい本はサッと読みますね。もちろん難しい専門書はものすごく時間をかけますが・・・・
by yablinsky (2010-07-23 06:14) 

nyankome

yablinskyさんはロマンチストなのですね。
ものによりますが、私も速読派です。子どもの頃から変わっていません。基本的にBGMがない方が読書に集中できます。
トリスタン・イズーのお話しは「アーサー王物語」の中で読みました。
by nyankome (2010-07-23 06:30) 

yablinsky

nyankomeさん、コメントありがとうございます。集中という意味ではBGMはないほうがいいかもしれませんね。この点、同意します。私も無味乾燥な専門書などを読むときはBGMなしです。それに読書時のJ-POPだと集中できません。日本語の歌詞と読書の内容が溶けてしまいます。ワグナーの歌劇はせりふが理解できないのでBGMに使えます。

アーサー王の中に出てくるトリスタンは別人というより別系統の伝説と思っています。「トリスタンとイズー」の人格やストーリーといろいろ矛盾があります。

by yablinsky (2010-07-23 06:45) 

ながぐつ

いやいや、古典を読まれるのがご趣味とは!
理系でいらっしゃるのに、恐れ入りました。大学時代、文系だったながぐつは、とんと読んだことがありません。つうか、今国語の教員で大学時代古典を専攻していた妻でさえ、今聞いたら、古事記・日本書紀も部分的にしか読んだことはないそうです。

BGMがワーグナーやマーラーというところが、いかにも yablinskyさんらしいですね。ながぐつは、速読もダメ、ながらもダメなので、NO BGMですね。

by ながぐつ (2010-07-23 06:59) 

江州石亭

yablinskyさんとは違う角度ながら古典は少々読んでいます。
吾妻鑑、関八州古戦録、梅松論等々を。勿論、古文書のままでは読めないですけれどね。
加えて、音楽関係も少々。
by 江州石亭 (2010-07-23 08:58) 

matcha

読書より、皆さんのブログを読む方が時間が長くなりましたね(笑・・・)。
僕もnyankomeさんと同じく、BGMはかけないですね。音楽をかけると音楽の方に集中して、どこまで読んだかわからなくなります(笑・・)。
ですが、僕もyablinskyさんのようにゆっくり読みますねぇ。
最近、速読が騒がれている中、yablinskyさんの読み方は、面白いと思います。
僕の最近の読書は、理論書が多いです。知識より考え方を知る読み方で、必ず筆者と何らかの議題で戦ってしまうので、速度なんてあってないようなものです。戦い始めると遅くなるし、相手の意見を聞くときや同意すると、速くなる。
だから、内容はしっかり覚えています。
by matcha (2010-07-23 11:59) 

ワカタカタカコ

「源氏物語」、瀬戸内、円地翻訳ヨリモ、与謝野晶子訳のホウガ、簡潔デ、分かり易いトィウ現象アリ。
by ワカタカタカコ (2010-07-23 19:14) 

yablinsky

ながぐつさん、コメントありがとうございます。大学に行っていたころ、当時は教養部があって、そこで西洋文学史を習いました。そのときの講義がイーリアスで、みんな眠そうに授業を受けていたのですが、私にはその先生の思いが伝わりました。この講義がきっかけです。教養部も捨てたものではないですよ。

古事記・日本書紀は日本の旧体制で利用されたので、特に大学や学校の先生にイメージが悪くなりましたからね。でもそろそろ見直しをしてもよい頃ではないでしょうか。

by yablinsky (2010-07-23 22:35) 

yablinsky

江州石亭さん、コメントありがとうございます。どの本も読んだことがありません。心に留めておきます。江州石亭さんもいろいろお読みなんですね。
by yablinsky (2010-07-23 22:37) 

yablinsky

matchaさん、コメントありがとうございます。私もブログで時間を使ってますね。このまま時間を費やしてよいのか自問自答しています。

matchaさんもゆっくり読むのですね。私はどうしても速いと理解や感動が中途半端になってしまいます。理論書ってどんな本か気になります。最近は読んでいませんが私も哲学の本を読むときはいろいろ考えながらテンポが変化します。
by yablinsky (2010-07-23 22:42) 

yablinsky

ワカタカさん、コメントありがとうございます。私はファンタジーが好きなので、源氏物語は高校で習って以来読んでいません。でも源氏物語も結構ファンタジーですかね。挑戦してみますか。現代語訳ならそれほど身構える必要もなさそうです。
by yablinsky (2010-07-23 22:44) 

yablinsky

tamanossimoさん、niceありがとうございます。
by yablinsky (2010-07-24 13:37) 

 ワカタカタカコ

今仕事で壱岐に来ています。

文化の衰退の続き…与謝野晶子のほうが昔の人なのに、より近代の円地文子、瀬戸内寂聴の翻訳よりも簡潔だと言いたかったのでした。
毎日新聞日曜版に同じ箇所の翻訳が1箇所のみ掲載され、それを見ただけで他の2人(冗長、意訳、勝手に付け加えている)を読む気がしなくなって。
by ワカタカタカコ (2010-07-24 21:24) 

yablinsky

ワカタカタカコさん、コメントありがとうございます。そういう意味ですね。なるほどなるほど。源氏物語は詳しくないのでなんとも申し上げられませんが、古事記や日本書紀はあまりにも記述があっさりしていて、心情描写を加えたくなりますし、状況も詳しく説明したくなります。

おかげで源氏物語、気になり始めました。古文の力が落ちていますから読めるかどうか・・・
by yablinsky (2010-07-25 07:04) 

yablinsky

アヨアン・イゴカーさん、ぼんぼちぼちぼちさん、niceありがとうございます。
by yablinsky (2010-07-25 07:14) 

Cecilia

ルネ・コロが出ているその「トリスタンとイゾルデ」、良いですよね!
トリスタンと言えば昔アニメで見てはまり、そのイメージをいまだに持ち続けています。
「トリスタンの嘆き」という中世の曲が結構好きです。
http://santa-cecilia.blog.so-net.ne.jp/2008-08-27
古典文学は専攻ではなかったのでそれほど深く学んでいるわけではありませんが、一応「古事記」は写本を読んだりもしました。
聖書はさすがに通読はしていませんが(通読する人も多いです。)文学として読んでも面白いと思います。
ギリシャ神話なども音楽をやる上では必読だと思いますが、子供時代に絵入りで読んだものと違って確かに読みにくいところもあるように思います。
by Cecilia (2010-07-25 07:37) 

yablinsky

Ceciliaさん、コメントありがとうございます。このCDお持ちでしたか。それにトリスタン・イズー物語もお読みとは。共通体験がありうれしく思います。

古事記の写本を読むとはすごいです。古事記を読んで思うのは
1、日本武尊(日本)
2、ヘラクレス(古代ギリシャ)
3、ギルガメッシュ(中東)
の3人はヒーローで首の複数ある怪物を倒したり共通点が多いということです。実際の人物がいて、それは各地に伝わったのではと勝手に解釈しています。

私はキリスト教徒ではないので、聖書は文学として読みましたが、とても感動しました。素直な心で読むのが大切かと思います。

ギリシャ神話で西欧文化の礎なのですが、概要を知っておけば知識的にはOKかと思われます。なかなか気を長くしないと楽しめませんね。私は近代日本文学の主人公と一緒に泣けませんが、ギリシャ神話の方が感情移入がしやすいです。

by yablinsky (2010-07-25 08:07) 

ワカタカタカコ

おはようございます 壱岐の朝です

>古文の力が

原文で読む気力はさすがに。
でも与謝野訳は原文に忠実かも。
谷崎訳にも興味あるけど
by ワカタカタカコ (2010-07-25 08:38) 

Caelum

むふ、yablinskyさんと嗜好が似通っているかも('ー`)
聖書や日本書紀、ギリシャ、北欧、ケルト、エジプト神話…
あの辺り、信仰は無くとも文学として面白いですよね。

ちょっと色が違いますが、ダンテの神曲が気になってます
yablinskyさんは神曲は読みましたか?
by Caelum (2010-07-25 17:45) 

yablinsky

ワカタカタカコさん、コメントありがとうございます。いろいろ貴重な情報をありがとうございます。まじめに原文はやはりつらいですね。

私は壱岐には行ったことがありません。対馬も含め一度訪問したいですね。
by yablinsky (2010-07-25 19:26) 

yablinsky

おおおおお、Caelumさんも同じご趣味とは!
確かに信仰がなくても楽しめます。一時的に信者になったつもりでのめりこむのも1つの読書法かと・・・インドの仏典も釈迦の影響がまだ強いものは信仰の方法などが書かれていますが、何世紀後に書かれたものは結構ファンタジーですよ。

ダンテの神曲は読んだことがありません。今まで気になっていませんでした。これも古いですね。Caelumさんのおかげで気になる本が増えました。ありがとうございます。

by yablinsky (2010-07-25 19:32) 

yablinsky

cheeさん、niceありがとうございます。
by yablinsky (2010-07-25 19:33) 

yablinsky

cfpさん、niceありがとうございます。
by yablinsky (2010-07-28 08:08) 

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